眼の病気 11. 飛蚊症

飛蚊症(ひぶんしょう)と網膜剥離(もうまくはくり)


  ☆  飛蚊症 ( ひぶんしょう )

・目を動かすと、目の前に黒い点のようなものが動くのに気がつき、
  蚊が飛んでいるように見えたり、蝿のように見えたりします。
 ある日、突然症状が出てくるのが普通です。

   これが飛蚊症です。

 なかには、思わず手で払ってしまう、とおっしゃる方もいます。
 
・ 形は色々で、丸い輪が見えたり、糸くず、髪の毛のように細長いものが見えることもあります。
 人によっては、アメーバのようなものが動いて見えると言われることもあります。

 私自身の経験では、突然目の前で蛇がのたうちまわるような感じがしたことを記憶しています。

この飛蚊症を起こす原因には、いくつかのものがあります。

・ 眼球の中は、透明なゼリー状の水でみたされています。
 これを 硝子体 しょうしたい ) と言います。

 目はピンポン玉のようなもので、中に水が入っていると思えば結構です。

 この、硝子体の中に濁りができると、目を動かした時に、水の中の濁りが目の奥の網膜に映って、なにかが目の前を動くように感じるわけです。
 
※ まず、大きく、病気で起こるものと、自然の変化で起こるものに分けて考えてみます。

1. 病気で起こるもの

  飛蚊症の症状の元になる原因はすべて同じで、眼球の中のゼリー状の水(硝子体)に濁りができることですが、目の中に炎症という病気が起こって濁りができることがあります。

・ これを、ぶどう膜炎と言います。

  硝子体の中だけでなく、目の前の方にある水の中にも濁りが出てきます。
 これが原因で飛蚊症を感じることはありますが、患者さんが自覚して訴えることはあまり多くないように思います。

・ もう一つの病気は、目の中の出血です。

 これを、硝子体出血( しょうしたいしゅっけつ )と言います。

 糖尿病網膜症や静脈閉塞症などの、目の奥の網膜の病気が原因となって、硝子体の中に出血が広がることがあります。

これは突然起こってきますが、患者さんが一番良く言われる症状は、目の中に墨を流したように黒いものが見えてきた、という言葉です。

 ひどいと、ものの形がわからなくなるほど視力が低下することがあります。

 これらの病気は別な話ですから、今回はこれ以上ふれません。

2. 病気ではなく、自然の変化で起こるもの

 この中には、近視のある若い人が感じるものと、加齢(老化)で起こるものがあります。

・ 10代後半から20代の若い人でも飛蚊症を感じることがあります。近視の人が多いと思います。

 硝子体は若いうちはゼリー状で、目の中をいっぱいにみたしています。
 そのままなら、ほとんど濁りを感じませんが、ゼリーが少しずつ、中で溶けていくことがあります。
 すると、一部には点のような濁りや、糸くずのような濁りが出てきて、それが目の中で少しゆらゆらと動いて見えることを自覚することがあります。

 ※ 飛蚊症は一般的にそうですが、空を見たり、白い壁をみたりすると、自覚しやすくなります。
 あるいは、本を読んでいると、白いページに濁りが動くのに気がつくこともあります。

 若い人のこのような飛蚊症は、病気につながるものではありませんので、特に気にする必要はありません。

・ 一番多いのは加齢(老化)に伴うもので、その中の一部ですが、病気につながることがありますので、注意が必要です。

 普通の人では 50 代から症状が起こり始め、60 歳前後が一番起こりやすいと思います。
 近視の強い人では、40 代から始まることがあります。

 これも硝子体の中の濁りを感じるのですが、この原因のことを、
 後部硝子体剥離 ( こうぶしょうしたいはくり ) と言います。

 硝子体は目の中全体にあるわけですが、目の後ろ側では網膜にくっついています。

 ※ 加齢とともに、
     硝子体は風船がちじむように、小さくなってきます


 硝子体がちじむと、目の前の方の硝子体は、くっついたままではがれませんが、目の奥の網膜にくっついていた部分が、網膜からはがれてしまいます。

 これが 後部硝子体剥離 という言葉の意味です。
目の奥ですから、後部という表現を使うわけです。

 ゼリー状のものもほとんどが溶けて水になってしまいます。

・ この時に、目の中に濁りが現れてきます。典型的な場合は、輪のようなにごりが見えますが、Cの字型とか、形は人それぞれです。

 濁りが薄いと、気がつかない方もいます。

 病気で起こるものとして、硝子体出血を挙げましたが、後部硝子体剥離が起こった時、一緒に出血を起こすこともあります。

 少量の場合は、ゴマ粒のような点々が見えますし、まれですが、沢山出血すると、一時的に見えなくなってしまうこともあります。

・ この、後部硝子体剥離は加齢に伴う自然の変化ですから、大半の方は、それだけで終わってしまいます。

 ※ 気をつけなくてはいけないのは、頻度は高くありませんが、これと一緒に網膜剥離(もうまくはくり)という病気を起こす場合があることです。

 これを次の項目でお話します。

・ ちなみに、飛蚊症はその濁りの強さによっては、かなり気になるものです。
  濁りが薄ければ、知らないでいる人もいますし、中には短期間で気にならなくなった、という方もいます。

 でも、飛蚊症の症状が何年も同じように続いて、かなり邪魔だと思うことも結構あります。

  ※ これを目薬や、のみ薬で取ることはできません

 もし、なおすのなら手術で目の中の濁りをきれいにするしかありませんが、手術には危険を伴いますので、病気とは言えない飛蚊症を手術することは一般的ではありません。

・ 白内障の所でも書きましたが、白内障手術で水晶体(レンズ)の濁りがきれいにとれて、目の奥に光が十分届くようになると、逆に手術の後、飛蚊症が気になる方も大勢います。

 ★  光視症 (こうししょう)

 飛蚊症と同じ時期に感じる症状に、光視症があります。

 目の視野のはしで光が飛ぶ(走る)症状を感じます。暗い所で気がつきやすいようです。

 これも飛蚊症と同じで、後部硝子体剥離が原因となって、症状が出てきます。
 硝子体が網膜からはがれる時に、網膜を少し引っ張る力が加わって、刺激で光を感じるようです。これはいずれなくなる症状です。

 この引っ張る力が強くなると、次の網膜剥離のところで説明する、網膜裂孔が出来ることになります。

 
☆  網膜剥離 (もうまくはくり)

 網膜剥離にはいくつか種類があります。

・ ここでお話する、後部硝子体剥離と関係したものを

裂孔原性網膜剥離(れっこうげんせいもうまくはくり)と言います。

網膜裂孔が原因となって網膜剥離を起こすという意味です。

 これは 50 代、60 代でよく起こる病気です。

・ 一方、10 代後半から 20 代ぐらいの若い方も網膜剥離を良く起こします。
 
※ 若い方の網膜剥離は後部硝子体剥離とは関係がありませんが、裂孔原性網膜剥離の中に含めて考えます。

 近視のある方が多く、元々、網膜に薄くて弱い場所があることが原因になります。
 病気の進行はゆっくりで、自然になおってしまうことも時にはあります。

 気をつけなくてはいけないのは、
片目の視力が低下していても気がつかない方がいることです。

 若い人の網膜剥離は、少しずつ進行しますので、視力に大事な黄斑まで網膜がはがれても、知らないでいることがあります。
 
 知らないで時間がたつと、治療をしても視力が十分回復しないことがあります。

・ 時々、片目ずつで見え方を確認する習慣は、他の病気の発見にもつながりますので、おすすめします。

・ さて、後部硝子体剥離に関連した、高齢者の網膜剥離ですが、網膜がはがれる原因となるのは網膜裂孔が出来ることです。

 ★ 網膜裂孔(もうまくれっこう)

 飛蚊症のところでお話したように、網膜には硝子体がはがれる時に引っ張る力が加わります。

 この時、力が強いと、布が引き裂かれるように、網膜にも裂け目ができてしまいます。
 これが網膜裂孔です。

 眼科医は普通、網膜に穴があいた、と言います。

・ 最初は穴があくだけで、まわりの網膜ははがれていません。

 時間とともに、穴を通じて、目の中にある水が網膜の裏側にまわりこんで網膜は、はがれてしまいます。
 視力に大事な黄斑がはがれると視力は大きく低下します。(眼の病気 8,9 で黄斑の説明が書いてあります。参照してください)

・ また、はがれた網膜の場所が、黒く視野が欠けて見えるようになります

 高齢者の網膜剥離の進行は急速です。一日で見えなくなってしまうこともあります。

 視野の一部が欠けて見にくくなったとき、特に飛蚊症の後に出てきた時は、早めに眼科を受診してください。

 ★ 網膜剥離の治療

 1) 網膜裂孔だけで、網膜剥離がほとんどない場合

 飛蚊症の症状を感じて早めに眼科を受診すると、網膜裂孔が出来ていても、まだ網膜剥離を起こしていない場合があります。

  この時は、外来で治療が可能です。

・ レーザー治療 ( 網膜光凝固もうまくひかりぎょうこ )を行えば大半はなおります。
  
 レーザーは網膜に熱を加えて、やけどを作るような治療です。
 皮膚のやけどで強いものは、治った後、硬い傷痕が残ります。

 網膜でも裂孔の周りにレーザー光線を当てて、やけどの痕を作るわけです。
 そうすれば、まわりの網膜がはがれることがなくなります。

 レーザーをしてから固まるまでには1,2週間かかります。

・ 治療をしても網膜剥離が広がることが一部にはありますが、多くはレーザー治療だけでなおります。

 2) 網膜剥離が起こってしまった場合

 裂孔だけでなく、そのまわりの網膜剥離が広がってしまった場合は、手術が必要になります。

 手術をしないと、失明してしまいます

・ 網膜の中心で視力に大事な黄斑がはがれていない時、また、一時的に黄斑がはがれても、早いうちに手術でなおすことができれば、視力は元通りに保たれます。

・ 黄斑がはがれて視力が落ちてしまった状態が長い期間続くと、手術でなおっても、視力の回復は十分ではなくなります。

 見にくくなったら早めに眼科を受診してください

 ★ 手術の方法

 手術には二つの方法があります。
 眼球の外側から手術をする方法と、目の中に細い器械を入れて手術する方法です。

 一般的には、手術には入院治療が必要になります。
 外来治療をする施設もありますが、少数です。

 1) 目の外側からする方法を、

   強膜バックリング と言います。
 
 眼球の壁にスポンジを縫い付ける手術をします。網膜裂孔の場所は、冷凍凝固で固めます。
 昔からやっている方法ですが、最近は高齢者では、やることが少なくなりました。

・しかし、若い人の網膜剥離は、この方法でやることが原則です。

 2) 目の中から手術する方法は、

   硝子体手術(しょうしたいしゅじゅつと言います。

  ここ20年以上前から非常に進歩した治療法で、今まで、なおせなかった色々な病気を、なおすことが出来るようになりました。

 糖尿病網膜症や黄斑円孔、黄斑上膜など、数多くの網膜の病気をなおすために手術が行われています。
 
 網膜剥離でも、50 代以降に起こるものでは、この方法を選択することが一般的になっています。

 その場合は、一緒に白内障手術(眼内レンズ手術)を行います。

 眼球の角膜(黒目)のすぐ横から、針のように細い器械を目の中に入れ、顕微鏡で目の中を見ながら手術をします。

 この方法で手術をした場合、はがれた網膜を押さえつけるために、一時的に、目の中(硝子体の中)に空気(ガス)を入れます

手術の後、しばらくの間、うつぶせで寝なくてはいけなくなります

 これが少し大変です。人によって何日間ぐらいその姿勢を保つのかは違いますし、横向きに姿勢を変える人もいます。
 トイレに行く時は、うつむきながら歩くことになります。

 手術はどの方法でやっても、全員が1回でなおるとは言えません

 病気の重症度によりますが、普通の網膜剥離であれば、1回でなおるのは 95% ぐらいでしょう。

 手術で特別な問題を起こさなければ、軽症の網膜剥離は、最終的には100 % なおるのが普通ですが、中に特殊な合併症を起こす患者さんがいます。
 これをあらかじめ予防することは出来ないので、運悪く、そういう状況になると治らない場合があります。

 また、網膜剥離の中でも特殊なもの、最初から重症のものでは、そう簡単にはいきません。
 何回も手術を繰り返すこともありますし、最終的には、なおらない事も出てきます。
 多くはありませんが、残念ながら失明してしまうこともあります。

 しかし、網膜剥離は手術をしなければ見えなくなってしまうわけですから、手術をすることが必要です。

 最近では、進行の早い網膜剥離では、病院を受診した当日に手術をすることが一般的になっています。
 急がないでも良い場合は、予定手術になることもあります。医師の説明を聞いてください。