眼の病気 10. 黄斑変性

黄斑変性と加齢黄斑変性


 
眼の病気 8 で、網膜と黄斑の説明をしました。以下にもう一度同じ話をのせます

☆ 眼は昔のカメラと同じ構造をしています。

  外の光は瞳からレンズ ( 水晶体 : すいしょうたい ) を通り、眼の中に入っていきます。
  眼球の中は、透明なゼリー状の水( 硝子体 : しょうしたい ) でみたされています
。目は、中に水が入っている、ピンポン球のようなものだと思っていただければよいですね。

 
ものを見る働きで一番大事な場所は、入ってきた光を感じる眼の奥の内側の壁です。
 カメラのフィルムに当たるものですが、それを網膜 ( もうまく ) といいます。

 網膜は、眼球の内側の壁の7〜8割を占めていますが、その中心の部分、視力に大事な場所が黄斑 ( おうはん ) です。少し、黄色っぽく見えるので、黄斑と言います。

  ここには、眼の病気が色々
起こります

 黄斑変性はそのひとつです

・ 変性というのは、体中どこにでも起こりますが、体の一部が、正常な形ではなくなってしまい、いつもの働きができなくなってしまうこと、と考えていただければ良いでしょう。

 簡単に言えば、壊れてだめになってしまった  状態です。

 程度は色々ですので、少し具合が悪いだけのこともあれば、完全にだめになって、全く働かなくなってしまうこともあります


・  ものを見る上で大事な黄斑には、色々な種類の変性がありますが、どれも起こると視力が低下したり、見にくくなってしまうことに違いはありません。

☆ ここでは、最近よく話題になる、加齢黄斑変性のお話をします。

 昔は老人性黄斑変性と言っていましたが、年齢的には50歳代からおこりますし、老人というのがいくつからか定義は難しい表現です。

 最近はより正確な言い方の、加齢という言葉を使うことが多いようです。

・ 黄斑部の網膜の下(あるいは外側と言いますか)に病気が起こります。

  最初は網膜自体には異常はありません。

 網膜の下(外側)には網膜色素上皮(もうまくしきそじょうひ)という薄い膜があります。
 更にその外側には脈絡膜(みゃくらくまく)という血管が豊富な場所があります。

・ 加齢黄斑変性では 脈絡膜から細い新生血管 が伸びてくるのが病気の始まりです。

 網膜にも脈絡膜にも、元々血管は沢山ありますが、それとは別に出来てくるのが新生血管です。

 新しく生まれてきた血管ですが、木の枝から芽が出るような感じで伸びてきます。

 本当は、眼を助けるために出てくるのでしょうが、実際には眼にとって具合が悪い反応しかしません。
 
・ 新生血管は脈絡膜の中から色素上皮を越えて、網膜の下に伸びてきます。

 普通の正常な血管は丈夫で簡単には破れませんが、
新生血管はもろくて破れやすいために出血を起こします。

 大きな出血が起こると、網膜で大事な働きをしている視細胞が壊れてしまいます。
 そのために視力が落ちてしまうわけです。

・ 自分の症状としては、最初のうちは、少し見にくくなること、ものがゆがんで見えることが主です。

いきなり大きな出血が起こると、視力はかなり低下してしまいます。

☆ 治療としては、以前は網膜光凝固(ひかりぎょうこ)と言って、レーザー光線で悪い新生血管を焼いて、つぶすことしかできませんでした。

 焼けば新生血管はなくなりますが、大事な網膜も一緒につぶれてしまうので、視力は回復できませんでした。

  今でもやることはありますが、病気が黄斑の真ん中から離れた場所にある時だけです。

 ・ 次に出てきた治療は特殊なレーザー治療で、静脈から血管の中に薬を注射してから、普通の光凝固とは違う、特殊なレーザー光線をあてる方法です。
  ( PDT : 光線力学療法 )。

  注射をしてからしばらくの間は太陽の光を避ける必要があり、少し不自由な治療です。

 一時はこの治療が主流でしたが、現在では一部に行うだけです。

 ※ 最近の治療の主体は、目の中(硝子体の中)に薬を注射する治療です。

 薬としては、ルセンティス、アイリーアの二つがよく使われています。

・ これにより加齢黄斑変性の治療は、大きな改革がなされたと言ってよいと思います

  昔に比べると視力を保つ効果、回復させる効果も改善しています。

 色々な問題はありますが、この治療が大きな進歩であることは間違いありませんし、しばらく続くと思います。

  ・ 眼に注射をするというと、恐がる患者さんが多いと思います。

 われわれは、慣れていますから平気ですが、知らない方が聞けばびっくりするのは当然です。

 非常に細い針を使って、黒目(角膜)の横の白目(強膜)の部分から、ごくわずかな量の薬を注射をします。
 
 ほとんど痛くはありませんし、しばらくの間目薬をさす必要がありますが、治療の後は通常の生活ができます。

※ 患者さんにとって問題なのは、お金がかかることです

 この注射は1本、18万円近くしますので、3割負担の方にはかなりの高額になります。

・ 具合が悪いことに、人によりますが、最初のうちは毎月注射をする場合がありますので、更にお金がかかります。(この大半は薬代です)

 病院の医師にとっても、患者さんの数が増えて、大勢に注射をするのが大変になっています。
 
☆ さて、現在、行われている治療は、病気の初期の人には有効ですが、悪くなってしまった眼の視力を、また元へ戻すというものではありません。

 最近話題になっている、iPS細胞を使った網膜色素上皮細胞移植は、悪くなってしまった視力の回復を目指す一つの動きです。

 まだこれから長い時間がかかると思いますが、将来、良い方法が生まれることを期待してください。