眼の病気 6. 屈折、近視

近 視 と 遠 視


 近視と遠視、その次に出てくる乱視は、ものを見る目の働きのなかで、屈折という言葉に関係したものです。

☆ 近 視

 近視のことは普通、きんがんと言いますね。

  近視は、小学校高学年になると、裸眼視力( らがんしりょく : メガネをかけない視力 )が低下して、メガネをかける子供が増えてきますので、みんな、なんとなく知っている言葉だと思います。

 さて、屈折というのは理科( 物理学 )の教科書の中に出てくる言葉ですね。苦手な方も多いと思います。私もその一人です。

 眼球は光学系と言われていますが、外から入ってきた光が、目の奥で光を感じる網膜にピントが合うことによって物を見ています。

・ このピントに関係している働きが屈折で、近視、遠視、乱視という言葉につながります。

 眼球はピンポン玉のような形をしていますが、中身には水が入っています。若いうちはゼリー状で、硝子体( しょうしたい )と言います。

 網膜は眼球の一番奥の壁にあります。眼球の内側の壁の7割近くの面積をしめています。
  カメラのフィルムにあたるもので、ここで光を感じています。

 屈折などの話を扱う、眼光学というのは、眼科学の一分野ですが、眼科医のすべてが得意としているわけではありません。

 私も物理は苦手ですので、これからの説明も適当なものになることをお断りしておきます。

・ さて、視力は普通、0.1 ですとか、1.2 です、という風に言いますね。
  メガネなしで、1.2 まで見えれば目が良いと思っていいです。

 モンゴルの遊牧民は 2.0 以上の、ずっと良い視力があると言われていますが、日本人なら 1.0 見えれば十分でしょう。

・ 裸眼視力( メガネなしの視力 )で 1.2 まで見えるのは、外から入ってくる光が、丁度網膜にピントが合っているためです。

 なにもしなくても、自然にピントが合う人の目の状態を、正視 ( せいし )といいます。

・  また、軽い遠視の人は、若いうちだけですが、自分で網膜にピントを合わせることができます。

・ 近視の人は、自然な状態では、網膜よりも手前にピントが合っています。
 自分では、どうがんばってもピントを網膜に合わせることはできません。
 
  ですから、網膜にピントを合わせるために、メガネをかける必要があるわけです。
  近視は人によってその程度が違います。

 よく、どのくらいの近眼ですか、と聞くと、普通の方は 0.2 です、とか 0.6 です、という風に裸眼視力を答えてくれます。

・ しかし、近視の程度は裸眼視力とは違います。正しくは屈折の度数で表現します。

  ー0.5 D とか ー4.0 D のようなもので、眼科医からメガネの処方箋をもらうと、そこに書いてあります。

 D はジオプターという単位を表しています。近視の場合はマイナス(ー)で、遠視の場合はプラス( + )で書いてあります。

 数字が大きいほど程度は強くなります。
  普通の近視は ー3.0 D 前後です。ー 8.0 D 以上になると強い近視です。

・ 近視がある人のメガネのレンズは凹レンズです。ですから凹レンズの度数はマイナスで表します。

・  虫眼鏡のような凸レンズは、遠視がある人のためのメガネに使います。
  凸レンズの度数はプラスで表します。

  日本人では近視の人の割合が多いようですが、本当の原因は明らかにはなっていません。

・ 遺伝の要素もあるでしょうし、近くのものを長時間見る、現代生活の影響もあるのでしょう。漢字が良くないという説もありましたが、真偽は不明です。

・ 最近出た論文では、詳しいことはよくわかりませんが、室外ですごす時間が長い子の方が、近視になりにくいとされています。
 日光を浴びることが影響しているようです。といっても、今の時代では難しいですね。

・ 近視の程度は二十歳ぐらいまでは進行します。その辺である程度安定しますが、大人でも近視が進むことはあります。

 老人になると白内障のために近視が進むことがありますが、これはまた別なお話です。

☆ 遠 視

 遠視という言葉をあまり知らない人が多いように思います。

  中には遠くが良く見える目だと誤解している人もいます。

・ 子供は小学校に入る前は、遠視の状態が一番普通です。

 簡単に言うと、遠視の眼球は小さくて、近視の眼球は大きいと考えてください。

 子供はまだ十分に目が大きくなっていないので、遠視なのです。

・ 小学校高学年になると近視の子が増えてきます。

 遠視も近視と同じで、外から入ってきた光が、網膜にピントが合わない状態です。
 
 しかし、近視と違って、軽い遠視なら自分で網膜に、ピントを合わせることができます。

 遠視の人は、自然の状態では、網膜の後ろの方にピントが合っています。

 我々は普通、調節という働きで近くを見ていますが、その働きを使って、遠視の人は遠くのものも、自分で網膜にピントを合わせることができるわけです。
 (老眼のところを参照してください)

 そのかわり、常に自分でものを見るための努力をしているわけですから、疲れやすくなることがあります。

 特に近くの仕事を長時間する場合に症状が出やすいです。これは年をとるとともに強くなります。

強い遠視では、はっきり物を見るためにはメガネが必要になります。

・ また、強い遠視があると、子供では視力が十分発達しない、弱視になることがありますので注意が必要です。

 軽い遠視の方は、若いうちは、非常に視力が良い状態であることも珍しくありません。

 しかし、50 代後半から、それまで良く見えていた遠くの方が、眼鏡なしでは見にくくなってきます。

  これは病気ではありませんので、必要に応じてメガネを作ることになります。ただ、今までメガネをかけていなかった分、メガネに慣れない方もいます。

 また、40 代になると老眼の症状を早く自覚するようになります。老眼もメガネが必要ですが、これにも不自由を感じる方がいます。

 その点、近視の方は、若いうちからメガネに慣れていますので、老眼になっても問題なくメガネを使うことができるようです。

  ただし、近視でも普段コンタクトレンズを使っている方は、メガネが苦手な場合があります。

 コンタクトレンズは、裸眼の見え方とほぼ同じように見えますが、メガネは周辺の視野が狭いですし、ゆがみはどうしてもあります。
 度が強くなるとものが小さく見えます。

 見え方の質は確かにコンタクトレンズの方がすぐれているかもしれません。ただ、コンタクトレンズが使えないこともありますので、メガネにも少し慣れていただきたいと思います。


乱 視


  乱視を正確に理解できている患者さんは、あまりいません。

  言葉の問題もあります。医学用語は実態に合わない変なものが沢山あります。

 しかし、幕末から明治時代にかけて、外国語をむりやり日本語に翻訳したためですから、わけのわからないものが一部にあるのは、やむをえません。

 一番多い誤解は、物がゆがんで見えると、乱視がひどくなったと考えることです。

乱視は、ものがゆがんで見えることとは、まったく関係ありません

・ 乱視は近視、遠視と同じで、屈折という働きに関係していて、ものを見る時に、ピントがどこに合うのかという問題です。

・ 乱視だけで、単独で存在するわけではありません。

  近視(性)乱視、遠視(性)乱視というように、近視や遠視に付随したものです。

 中には近視も遠視も両方含まれている、混合乱視という言葉もあります。

・ 精密機械で作ったレンズなら、光は一つの焦点に集まりますが、人間の眼ではそういうわけにはいきません。

 屈折に関係するのは、黒目の表面( 角膜 )と、目の中のレンズ( 水晶体 )ですが、どちらにも多少のゆがみがあるのが普通です。

 ゆがみが全くない人は少数です。

・ 光が通過する所に、ゆがみがあれば、光のピントが合うのは一か所にならず、2か所に分かれます。

 これが乱視ということで、メガネで矯正する時に、特殊な乱視用レンズで補正する必要が出てきます。

・ 乱視も程度問題で、多少の乱視は誰にでもあると考えてよいと思います。

・ 非常に強い乱視の場合、強い遠視と同じで、子供の弱視に関係することがあります

 それ以外の場合、乱視は気にしなくてもいいですし、メガネの矯正でも、必ずしも乱視を補正しないこともあります。

・ コンタクトレンズの場合、ハードコンタクトレンズはそれ自体に乱視を矯正する働きがありますが、ソフトレンズはそういうわけにはいきません。

 ですから、最近一番良く使われる、使い捨てのソフトコンタクトレンズでは、乱視矯正が含まれているものもあります。

老 視 ( 老 眼 )



 老視は普通、老眼と言われます。

  遠視、近視、乱視は屈折に関係したものですが、
 
・  老視は調節という働きに関係したもので、他のものとは全く違うものです

 しかし、対応としては同じようにメガネをかけますので、良く違いがわからない患者さんが多いようです。

・  年をとって目が見にくくなることを全部老眼だと思っている方もいます
 
  これはもちろん間違っており、遠くが見にくくなるのは老眼ではありません。

※ 近くの細かい字にピントが合わなくなるのが老眼です

 もう一つ、老眼という言葉がよくありません。老眼の症状が出てくるのは、40 歳からです。
  いくらなんでも 40 歳の方に老人という言葉を使うのは可哀そうです。

 調節障害(機能低下)という言葉もありますが、わかりにくいですね。まあ仕方がありません。

・ 調節というのは、近くの物を見る時に、手元にピントを合わせる働きです

 若いうちは自由自在に遠くも近くも自然に見えますから、なにも意識していません。

・ この調節の働きが低下して起こる症状が老眼です。

 実際には、20 歳の方でも、子供に比べれば調節の働きは低下しています。これが年とともに徐々に進行していきます。

・ そして、それを自覚症状として感じるのが、一般的に 40 歳ごろからです。

 なんとなく、辞書のような小さな字がはっきり見えなくなった。新聞を読む時に、少し離してみた方がみやすい、などという症状が出てきます。

 事務仕事を長時間する人は、早く症状を感じます。短時間なら良くても、長時間仕事をすると疲れます。

・ 40 代の方の眼の疲れの原因は、この老眼とドライアイが多いと思います。
  ドライアイも同じような年代から多くなりますので、両方が重なって症状が強くなります。

 最近はパソコン作業が多いので、ドライアイの患者さんでは余計に負担が大きくなります。

・ 時々、近眼の人は老眼にならないと思っている方がいます。そうではありません。

近視の人は、元々、目のピントが近くの距離に合っているわけです。

 ですから、近眼の人も同じように老眼になりますが、普段かけている近眼用のメガネをはずすと、近くが見やすくなりますので、老眼でも困らないわけです。
 
普段のメガネ(これは遠くを見るためのメガネなのです)、をかけたままでは、近くのものが見にくくなっているのは他の方と同じです。

※ 老眼の対応はメガネです。老眼は年とともに進行します。
といっても、途中で進行は止まりますが、普通、3段階すすみますよと説明しています。

 100 円均一ショップで売っている老眼用メガネに、+1 から +3 まで段階があるのと同じです。

 老眼用メガネのレンズは遠視と同じで、凸レンズのことが多いと思います。そのため、老眼と遠視の区別がつかない方が多いようです。

 しかし、近視の強い方では、老眼用メガネのレンズは近視と同じ凹レンズになります。

・ 老眼鏡は近くのものを見るためのものと考えてください

・ どういうメガネを作るかは、その人の生活状況によって違います。老眼専用のメガネと、遠近両用のメガネがあります。

 専用メガネ( 老眼鏡 )は長時間本を読んだり、事務仕事をするのには便利です。

 しかし、メガネのピントは手元( 30〜40 cm )にしか合っていませんから、そのままでは遠くは見えません。
  遠くを見るためには、老眼鏡をはずすか、遠く用のメガネにかけかえる必要があります。

 よく、事務の仕事中に老眼鏡を鼻眼鏡にして、遠くを見る人がいるのはこのためです。

・ メガネをかけたまま遠くも近くも見たいという方は、遠近両用メガネが必要です。

 これには段階的にレンズの度数が変わっていく、累進レンズと、メガネのレンズの下の方に、近く用のレンズをはめ込んだ二重焦点レンズがあります。

・ いずれにしても近くを見るのには慣れが必要ですし、今までメガネをかけていない方では、かけずらいと言う人もいます。

 メガネはどうしても視野の周辺がゆがんで見えますが、累進レンズは余計にその感じが強くなります。
  足元がゆがむので階段を下りる時がこわい、という症状を訴える方もいます。

 メガネの処方の際には十分な練習が必要です。眼科で処方してもらうのが良いと思います。
 
・ ひとつ注意が必要なのは、パソコンを使うかたです。

 パソコンは 50 〜60 cmぐらいの距離で見ることが多いと思いますが、遠近両用のメガネは使えません。

  デスクトップの画面をまっすぐ見る時に使う、遠近両用メガネのレンズの位置は、レンズの上の位置ですが、これは遠くを見るための場所で、パソコン画面にはピントが合いません。

 遠近両用メガネでパソコンを見ると、自然に顎が上がって、レンズの下の方で見るようになります。

・ パソコンを使う時には、パソコンと手元が見える、専用のメガネが必要です。
  40 歳を過ぎたら、仕事をする方は、メガネは何種類も必要になるのはやむをえません。一番、いやな年代です。

・ 老眼の度数は、60 歳ごろまでに、1,2  回変更することが必要になるのが普通です。